k-holyの史跡巡り・歴史学習メモ

趣味の史跡巡りと歴史のことを書きます。戦国時代でも織田信長上洛以前の畿内と西国が多め。内容には素人の根拠無い想像が混ざってるのでお気をつけください。

私のおいなりさん…稲荷山のお塚信仰

伏見稲荷大社と稲荷山の歴史 に引き続き、伏見稲荷について。

稲荷山とお塚信仰

稲荷山の参道を歩いていると、無数の鳥居はもちろんですが、山中のあちこちに建てられた「お塚」の数々にも興味を惹かれます。

これらのお塚は、稲荷神を信仰する方が私的な守護神として思い思いの名前を付けて奉納したものですが、その歴史は意外と新しく、明治時代に稲荷大社によって「七神蹟」(一ノ峰、二ノ峰、間ノ峰、三ノ峰、御劔社、御膳谷、荒神峰)が定められて以後、急速に増えていったそうです。

稲荷山全体でのお塚の数は、昭和初めには約2500基、昭和41年には7762基、そして現在では一万を下らないと言われています。

一般の参道を巡って最初に目を引くのは、熊鷹社の手前右手にあるお塚群です。

ひたすら頂上を目指す心境なのか、参道の鳥居から外れてはいけないと思うのか分かりませんが、結構スルーされる方が多いです。もったいない…。

熊鷹社なら「○鷹大神」「熊○大神」というように神蹟にちなんだ名前が多く目につきますが、一つの石碑には複数の神名が書かれていたり、更にそれが複数あったりもします。

よく見ると…。

猫が寝ていました。稲荷山の中には猫がたくさん棲んでいるようですが、特に夏場は参道やお塚で座ったり伸びたりしているところに出会います。

稲荷山は猫好きにもオススメなのですよ。

たくさんの石碑が並ぶお塚。

企業が建てたお塚には、個人の人名を元に名付けられたと思われるものもよく見られます。

こちらのお塚は石造りの扁額に「天地の大神」とありますが、「ヤエコ姫大明神」とも書かれていて、創業者の名前のようです。

そして、時にはこのように進化することも。

こちらは三ツ辻から四ツ辻の間にある「大松大神」のお塚。

このように、稲荷山には七神蹟の他にも神名が付けられて何らかのご利益の信仰を受けている社がいくつかあります。

(三徳社、大杉社、眼力社、薬力社、傘杉社など)

大松大神のひょうたん型のお塚は、吉田初三郎『伏見稲荷全境内名所図絵』(大正14年)にも描かれており、古くから有名だったようです。

こちらは御膳谷のお塚から。湿気が篭りやすいのでしょうか?滝場にあるお塚のように、苔がたくさん生えています。

狐像にもびっしりと苔が。

不思議な名前が印象深い「豆ちゃん大神」その由来は何でしょうか?

御膳谷の辺りは少し開けているためか、奥の方にはまだ新しいお塚も見られます。

新しいだけあって(?)、結構まめに手入れされているようです。

株式会社サンガレージで「日の丸大神」社名にちなんだものかな?

豊受大神伊勢神宮の外宮に主祭神として祀られている食物の女神ですが、同じ農耕神ということで宇迦之御魂大神とも同一視されることがあります。

豊川大神はおそらく現在の豊川閣妙厳寺、いわゆる豊川稲荷の荼枳尼真天のことですね。稲荷山においてはどちらも同じ神でもあり、別の神でもあり…?

それに、成田山不動明王高野山弘法大師。稲荷山らしいお塚だと思います。

こちらは三ノ峰、白菊大神が祀られた下之社。

民間の方が建てた数々のお塚は、これら神蹟の社のミニチュア版のようにも見えますね。

稲荷大社神道神仏分離政策の影響を受けたのに対して、お塚への信仰を「庶民による自然神信仰の再生」として、稲荷山全体が二重三重の信仰構造を持つことを象徴するとの意見もあります。

稲荷信仰の歴史を遡れば、密教と習合した稲荷信仰の広まりによって老翁姿の稲荷神が各地に伝えられた後には、中世の神仏習合の時代には蛇を眷属とする宇賀弁才天、狐を眷属とする荼枳尼天と習合し、白狐に跨り白蛇と狐を頭上に戴く女神の姿として描かれるようになりました。

白狐に跨った荼枳尼天に聖天と弁財天が合体した三面十二臂の「三天和合尊」はかつての本願所、愛染寺の本尊といわれ、また大黒天や毘沙門天をも取り込んだ「稲荷曼荼羅図」は今も伏見稲荷大社が所蔵しているそうです。

14世紀の『稲荷記』には東の峰は大威徳・天照大神荼枳尼天、南の峰には降三世・丹生明神・訶梨帝母、西の峰には愛染・弁財天、北の峰には不動・三大神、中の峰には稲荷神・阿弥陀・辰孤王と記されているそうで、まさに中世の稲荷山は多様な信仰を取り込み混沌とした曼荼羅世界を構築していたことが伺えます。

明治政府の神仏分離政策によって衰退したかに見える神仏習合の信仰ですが、今では稲荷山のお塚信仰に形を変え、庶民の間で脈々と受け継がれているのかもしれません。

それは私のおいなりさんだ

お塚は私的な稲荷神を祀ったものということで、要するに「私のおいなりさん」です。

そう考えると、この神名が気になって頭から離れなくなってしまうわけですよ…!!

じっくり探してみると、意外と色んな所で見つかります。これが。

夜になっても目についてしまう。

ああっ、惜しい。とか思うようになって…これはいけない。

しまいには、こんなのまで気になるように…。

もはや、重症です。

最後は綺麗に閉めましょう。

2009年の本宮祭、大雨の後に撮影しました。

落雷騒ぎで消防隊も来たほどの悪天候の中、三脚を担いで行って良かった。思い出の写真です。

今は本宮祭も人出がすごいことになってますし、こういう状況で撮影できる機会はなかなかなさそうです。

参考

  • 中村陽 監修『イチから知りたい日本の神さま2 稲荷大神 お稲荷さんの起源と信仰のすべて』(戎光祥出版)

稲荷大神 (イチから知りたい日本の神さま)

稲荷大神 (イチから知りたい日本の神さま)